Skip to main content

はじめに

相続対策として生命保険を活用する際、よく登場するのが「500万円×法定相続人の数」という非課税枠です。

このおなじみの「500万円」という金額が、令和9年度税制改正で引き上げられる可能性があります。金融庁は令和9年度税制改正要望として、死亡保険金の相続税非課税限度額について、現行の限度額に、「配偶者及び未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算するよう求めています。

現在は「500万円×法定相続人」

被相続人が保険料を負担していた生命保険の死亡保険金を相続人が受け取った場合、その死亡保険金は相続税の対象となります。

ただし、その全額に相続税がかかるわけではありません。現在は、「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。例えば、法定相続人が妻と子2人の計3人であれば、死亡保険金のうち1,500万円までが非課税です。

今回の金融庁の要望が実現した場合、配偶者や扶養されている未成年の法定相続人がいるケースでは、これにさらに500万円ずつ非課税枠が上乗せされます。

例えば、妻と未成年の子2人が法定相続人で、いずれも今回の加算対象となるケースなら、現行の非課税枠1,500万円に1,500万円が加算され、合計3,000万円まで拡大する計算です。

なぜ非課税枠を増やすのか

金融庁が重視しているのは、遺族の生活保障です。

令和9年度税制改正要望の資料によれば、子育て世帯の30~40歳代男性の死亡保険金の平均加入額は約2,100万円です。一方、母子世帯の月々の家計収支は、実収入約32万5千円に対して実支出約30万3千円で、余裕は約2万2千円にとどまっています。

さらに、相続財産の36.8%は土地・家屋など換金性の低い資産です。相続財産が多くても、相続税を納めた後に遺族が自由に使える生活資金が十分に残るとは限りません。金融庁はこうした事情から、特に配偶者と未成年の子が残された世帯について、死亡保険金の非課税枠を手厚くする必要があるとしています。

実は35年以上前から要望されている

もっとも、今回の要望を見て「来年から非課税枠が増える」と考えるのは早計です。

現在の500万円という金額は、昭和63年にそれまでの250万円から引き上げられたものです。そして金融庁の資料によれば、今回と同様の引上げについては、平成3年度税制改正から継続して要望されています。

つまり、長年にわたり要望されながら実現していない項目でもあります。ただ、500万円という金額が設定されてから約40年が経過し、物価や家計を取り巻く環境も大きく変わりました。令和9年度税制改正では、減価償却資産の10万円・20万円基準など、長期間据え置かれてきた金額基準そのものを見直そうという動きも出ています。

相続税対策として利用される機会の多い生命保険だけに、500万円という長年変わらなかった数字が動くのか。今後の税制改正議論に注目したいところです。