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はじめに

令和8年度の税制改正において、中小企業や個人事業主にとって非常に影響の大きい「少額減価償却資産の特例」の見直し案が出ています。

少額減価償却資産の特例が40万円に

これまで、パソコンやオフィス家具などの備品は、取得価額が10万円以上の場合、原則として数年間にわたって

減価償却を行い、少しずつ経費化しなければなりませんでした。しかし、「少額減価償却資産の特例」を適用すれば、30万円未満の資産であれば、購入したその年に全額を経費として計上できました。

昨今の物価高騰を受け、高性能なIT機器や設備が値上がりし、これまでの「30万円」という枠では、必要最小限の投資すら全額経費にできないケースが増えていました。そこで今回の改正では、この判定基準が「40万円未満」へと引き上げられます。これにより、より高性能なパソコンや什器などを導入する際のハードルが大きく下がります。

即時償却がもたらすキャッシュフローの改善

この特例の最大のメリットは、何と言っても「買ったその年に一括で全額を経費にできる(即時償却)」点です。

例えば、これまでなら4年間かけて毎年数万円ずつ経費にするしかなかった35万円の高機能パソコンも、これからは取得した事業年度に一括で費用計上可能です。これにより、利益が出ている事業年度に戦略的な設備投資を行うことで、当期の課税所得を圧縮し、賢く納税額をコントロールできます。なお、20万円以上30万円未満の資産については、少額減価償却資産の特例を使わずに「一括償却資産」として3年均等償却する方法も選択できます。どちらが有利かは事業年度の利益状況によって異なりますので、ご判断の際はご相談ください。「節税」という側面だけでなく、最新機器へ早期に更新することで、業務スピードの向上やデータセキュリティの強化など、本業の生産性向上に直結する投資を迷いなく行えるという点が、経営者にとっての最大のメリットと言えるでしょう。

注意が必要な上限額と適用要件

非常に使い勝手の良いこの制度ですが、いくつか注意すべきルールがあります。まず、年間合計300万円までという上限額は維持される予定です。つまり、いくら40万円未満のものなら何でも経費にできるといっても、年間の合計額が300万円を超えると、超えた分については通常の減価償却が必要になります。

また、今回の改正では、適用対象となる中小企業の規模要件が従業員数500人以下から400人以下に厳格化されました。常時使用する従業員が401〜500人の企業は、改正後に本特例の適用対象外となります。さらに、適用期限も令和11年3月末まで延長される見込みであり、長期的な視点での設備投資計画が立てやすくなっています。購入する備品の合計金額が年間300万円の枠内に収まるか、また、決算直前の駆け込み購入が「事業供用(実際に使い始めていること)」に該当するかなど、実務上のチェックは欠かせません。

改正を活かした経営判断のために

今回の改正は、物価高という逆風の中で経営を続ける中小企業にとって、非常に追い風となるニュースです。しかし、経費化のタイミングや対象資産の区分など、税務上慎重に判断すべきケースも存在しますのでご不明点はお気軽にご相談ください。