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はじめに

オーナー企業の相続や事業承継において重要となる「取引相場のない株式」の評価方法が、大きく変わる可能性が出てきています。

現在、非上場株式は、会社の規模などに応じて、類似業種比準方式(同業の上場企業の株価を基に評価)や純資産価額方式(会社の純資産を基に評価)を用いて評価します。大会社では原則として類似業種比準方式、小会社では純資産価額方式、中会社では両者を併用する仕組みです。

発端は会計検査院の指摘

見直しのきっかけとなったのが、令和6年11月の会計検査院による指摘です。

会計検査院が両方の価額を確認できた延べ616社では、類似業種比準価額の中央値は11,622円、純資産価額の中央値は42,648円で、前者は後者の27.2%にとどまっていました。さらに純資産価額が0円の4社を除く612社では、477社(77.9%)で類似業種比準価額が純資産価額の半分未満でした。

つまり、会社規模が大きく類似業種比準方式を利用できる会社ほど、相対的に低い評価額となる場合があるわけです。これを受け、国税庁は令和8年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、評価制度そのものの見直しを進めています。

類似業種比準方式がなくなる?

注目したいのが令和8年8月20日に開催された第5回会議です。

国税庁からは、会社規模による区分を廃止し、広範な企業に共通の評価方式を適用する案が検討課題として示されました。さらに、類似業種比準方式を存置せず、企業の収益力を重視した「インカムアプローチ」を評価の主軸とする案まで示されています。

さらに具体例として示されたのが「残余利益方式」です。帳簿上の純資産をベースとし、そこに企業が通常期待される利益を上回る「超過収益」の数年分を加減して株価を算定する考え方です。赤字企業や低収益企業であれば、簿価純資産を下回る評価額となることも想定されています。

現行制度とは発想が大きく異なるため、実現すれば非上場株式評価の大改正となります。

経済産業省は「慎重な検討」を要望

こうした中、経済産業省は令和9年度税制改正要望として「取引相場のない株式の評価方式に関する見直し」を提出しました。

興味深いのは、単純に評価方法の変更を求めているわけではない点です。経済産業省は、見直しによって多くの企業に影響が及ぶ可能性を指摘し、「企業の成長や事業承継を阻害することがないよう、慎重な検討が必要」としています。

株式評価の公平性を確保し、評価額圧縮を目的としたスキームに対応する必要がある一方、株価が大幅に上昇すれば、正常に成長してきたオーナー企業の事業承継を難しくする可能性もあります。

現時点(令和8年9月時点)では、新しい評価方式が決定したわけではありません。令和9年度税制改正に向けた重要な論点の一つとなりそうです。