最近、「出張旅費規程を作れば節税できる」という広告やSNSでの情報発信を目にする機会が増えています。旅費規程さえ作れば日当は非課税になるのでしょうか。
はじめに
最近、「出張旅費規程を作れば節税できる」という広告やSNSでの情報発信を目にする機会が増えています。出張時に支給される日当は、一定の要件を満たせば従業員や役員の給与として課税されず、会社側では損金に算入できるため、節税策として紹介されることも少なくありません。
しかし、「旅費規程を作れば日当はいくらでも非課税になる」というわけではありません。節税効果ばかりに注目して安易に導入すると、税務調査で問題となる可能性があります。今回は、出張旅費規程を導入する際に知っておきたいポイントを解説します。
規程を作れば非課税、ではない
所得税法では、勤務する場所を離れて職務を行うための旅行について、「その旅行について通常必要であると認められる」旅費を非課税と定めています(第9条第1項第4号)。
ここで重要なのは、非課税となる理由が「会社に旅費規程があるから」ではないという点です。旅費規程は支給基準を明確にするために重要ですが、規程を作成しただけで、そこに記載した金額が自動的に非課税になるわけではありません。
例えば、会社の近隣への短時間の外出まで「出張」として毎回多額の日当を支給していれば、その合理性を問われます。通常必要と認められる範囲を超える部分は、給与として課税されます。
日当はいくらまでなら大丈夫?
旅費規程を作る際に最も気になるのが、「日当はいくらまでなら非課税なのか」という点でしょう。しかし、税法には「1日○円まで」という一律の非課税限度額は定められていません。
判断にあたっては、国税庁の通達で、役員と使用人の全員を通じて適正なバランスが保たれた基準か、同業・同規模の会社が支給している金額に照らして相当か、の2点を勘案するとされています(所得税基本通達9-3)。社長や一部の役員だけを対象とした制度は、日当ではなく給与と判断されやすくなります。
そのため、「社長は1日5万円の日当にすれば節税効果が大きい」といった発想で金額を決めるのは危険です。
役職によって日当に差を設けること自体は問題ありませんが、その差を合理的に説明できることが重要です。
「いくらなら大丈夫か」ではなく、「なぜこの金額なのか」を説明できるようにしておきましょう。
税務調査で見られるのは「実際の運用」
立派な旅費規程を作っても、実際の運用が伴っていなければ意味がありません。
税務調査では、本当に出張が行われたのか、規程に従って支給されているか、出張先や目的、日程などが確認されます。
出張のたびに詳細な報告書を作る必要はありませんが、訪問先や出張目的、日付など、後から確認できる記録は残しましょう。交通機関やホテルの領収書、スケジュール、メールも出張の実態を説明する資料になります。
大切なのは、規程の有無ではなく、その内容と実際の運用です。すでに旅費規程を導入している会社も、この機会に「金額は妥当か」「実際の運用と規程が合っているか」を一度確認してみてはいかがでしょうか。
