決済代行会社である株式会社全東信が破産し、多くの加盟店で売上金の未入金やクレジットカード決済の停止が発生しました。
はじめに
令和8年7月、決済代行会社である株式会社全東信が破産し、多くの加盟店で売上金の未入金やクレジットカード決済の停止が発生しました。「カードで支払ってもらったのに売上金が振り込まれない」という事態は、多くの事業者にとって想定外だったのではないでしょうか。
報道によれば、負債総額は約1,151億円(令和8年7月7日時点・東京商工リサーチ調べ)と令和8年最大規模の倒産となり、約2万店の加盟店で約53億円の売上金が未払いになっているとされています。
「カードで売れたのに入金されない」という衝撃
「お客様はカードで支払いを済ませているのに、なぜお店にお金が入ってこないのか」そう疑問に感じた方も多かったはずです。
今回の出来事は、普段何気なく利用しているクレジットカード決済の仕組みを理解するとともに、企業の資金管理について考えるきっかけとなりました。
クレジットカード決済は「見えないバトンリレー」
クレジットカード決済は、お客様・加盟店・カード会社だけで完結する仕組みではありません。
実際には、カードブランド(VISA、Mastercardなど)、加盟店契約会社(アクワイアラ)、そして決済代行会社など、複数の事業者が役割を分担しています。決済代行会社は、加盟店が複数のカードブランドを一括して利用できるよう契約や精算業務をまとめる存在です。店舗側は一社と契約するだけでさまざまなカードブランドに対応でき、売上管理や入金管理も一本化できます。
この仕組みは非常に便利ですが、その一方で、決済代行会社が経営破綻した場合には、その影響が加盟店にも及ぶ可能性があることが、今回明らかになりました。
「誰から入金されるのか」を知っていますか
税理士として企業の月次決算や資金繰りを見ていると、「売掛金はあるけれど、その相手先を十分に把握していない」というケースは意外に少なくありません。
例えば、「どの決済代行会社を利用しているのか」「入金サイトは何日なのか」「売上の何割を一社に依存しているのか」といった点まで把握している企業は、それほど多くないのが実情です。
しかし、売掛金は企業にとって重要な資産です。誰に対する債権なのか、いつ回収される予定なのか、万一その相手に信用不安が生じた場合にどの程度の影響を受けるのかを理解しておくことは、資金繰り管理の基本と言えます。
手数料率が0.1%安いことも大切ですが、それ以上に重要なのは「安心して資金を回収できる仕組み」を選ぶことです。必要に応じて複数の決済サービスを利用し、リスクを分散させることも経営判断の一つでしょう。全東信の破産は、多くの事業者にとって予想外の出来事でした。しかし、この出来事が教えてくれたのは、「売上を伸ばすこと」と同じくらい、「売上を確実に現金として回収すること」が企業経営では重要であるという、ごく基本的な原則です。
決算書の利益だけでは見えてこないリスクに目を向け、資金繰りという視点から経営を見直すこと。それこそが、今回の出来事から私たちが学ぶべき最大の教訓です。
