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中小企業オーナーの事業承継対策の根幹を成す「財産評価基本通達」の評価ルールを約60年振りに刷新しようとする極めて重要な動きが起こっています。

はじめに

国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の初会合を開催しました。これは中小企業オーナーの事業承継対策の根幹を成す「財産評価基本通達」の評価ルールを約60年ぶりに刷新しようとする極めて重要な動きです。

見直しの背景

今回の見直しの直接的な引き金となったのは、会計検査院による指摘です。現在の評価制度では、会社の規模や評価方式(類似業種比準方式vs純資産価額方式)の違いによって、同一の企業価値であっても評価額に大きな開き(中央値で約3.7倍)が生じている実態が明らかになりました。

この「評価額の乖離」を突いた恣意的な株価対策(会社規模の操作や、あえて純資産価額方式を回避するスキームなど)が横行していることを国税庁は重く受け止めています。

検討されている「4つの視点」

有識者会議では、以下の4つの観点を軸にルールの再構築が進められています。

会社規模(大・中・小)の境界線で評価額が急変する、いわゆる「崖」の問題を解消します。規模区分の判定基準の見直しや、評価方式の案分比率の調整が検討対象です。

現行の評価通達は昭和39年に制定されており、特に配当還元方式の還元率(10%)は制定当時から見直されていません。類似業種比準方式も昭和39年の導入ですが、その後も算式の改正など部分的な見直しが重ねられてきました。時代にそぐわない部分が出てきており、検討対象になっています。

グループ法人税制や種類株式を濫用し、意図的に会社規模を変えたり利益を圧縮したりして株価を下げる「節税スキーム」を封じ込めるため、通達レベルでの明確な否認規定や計算ルールの厳格化が検討されています。

「著しく不適当」な場合に、当局が独自の評価を行える「総則6項」について、納税者の予測可能性を高めるため、どのような場合に適用されるかの基準をルール化する動きがあります。

実務への影響

今回の改正は、多くのケースで「評価額の引き上げ(増税)」につながる可能性が高いと予測されています。類似業種比準方式によって株価を低く抑えられていた大規模・中規模の中小企業にとっては大きな影響が出る可能性もあります。また、改正によって株価が大きく上昇すれば、納税猶予制度(事業承継税制)の重要性がさらに高まります。

今後のスケジュール(予測)

新ルールの適用開始は、早ければ令和10年1月からと予測されています。一方、その対策には年単位の時間を要します。現行ルールが適用される令和8年~令和9年のうちに、現在の自社株評価を再試算し、贈与や組織再編の実行を検討すべき重要な時期となる可能性があります。

本件は今後の中小企業経営に多大な影響を及ぼすため、秋の取りまとめに向けて続報にご注視ください。